INOSHIRU イノシルのロゴ

宇宙を目指してアメリカへ

  • 著者:宮下 裕策(京都大学医学部2年)
  • 投稿日:
  • 国名:
  • 派遣先機関:アリゾナ大学
  • 留学目的:その他

一問一答コーナー

名前:宮下 裕策(Yusaku Miyashita)
所属大学・学年:京都大学医学部2年
留学先の国:アメリカ
留学先の大学(機関):Biosphere2(アリゾナ大学)
留学の期間:2019年8月(医学科1年次)
留学の目的:有人宇宙学実習
留学の費用(概算):0
-学費:0
-家賃:0
-生活費:0
-渡航準備(保険、航空券、Apartmentのdepositなど):0
プログラム(仲介してくれた機関/人):京都大学宇宙総合学研究ユニット
利用した奨学金:-
VISA:ESTA
保険:ソニー損保
留学中の住まい:Dormitory(Biosphere2)

プロフィール

奈良県出身。幼少期より宇宙の神秘に憧れ、大学入学後も宇宙を目指し活動しています。有人宇宙関連分野の中でもとりわけ「宇宙医学」に関心を持っています。宇宙医学の学生コミュニティ-Space Medicine Japan Youth Community-の運営に携わり、宇宙医学スタディツアーをはじめとするイベントの企画、運用を行っています。また、放射線生物研究センターにて、放射線の細胞への影響に関する研究テーマに取り組んでいます。大学では、医学部陸上部、医学部卓球部等に所属しています。趣味はけん玉、ピアノ。

サマリー

・隔離生態系のいろはを、五感を通して知る
・宇宙を目指す仲間ができた
・湧いてくる蛾と格闘する日々
・驚きの連続であった現地での生活

Q1. 留学中にカリキュラムで学んだことについて

アリゾナ大学が運用管理しているBiosphere2で実施されたSpace Camp at Biosphere2(SCB2)に参加しました。

Biosphere2は、人類が他惑星に移住した際に、閉鎖された狭い生態系の中で生存することが出来るのかを検証する目的で建造された、巨大な密封人工生態系です。本プログラムでは、Biosphere2にて隔離生態系として再現されている熱帯雨林や海、砂漠環境について学びました。また、それぞれのバイーオームについての講義・実習を通して、本プログラムのミッションゴールでもある、「火星に移住した際に居住施設となるBiosphere3の設計(デザイン)」に必要な総合的な知識を学びました。プログラム全体が火星ミッションを模擬しており、火星地表を想定した宇宙放射線の被曝シミュレーションを行ったり、毎日朝と夜にストレス検査をしたりしました。

夜にはAstronaught nightと称して、油井亀美也宇宙飛行士をはじめとする3人の宇宙飛行士からご講演をいただきました。

 Q2. カリキュラム以外の、留学先ならではの現地での生活について

本プログラムは日本・アメリカからそれぞれ5人の学生が参加しており、実習中は日本人1人アメリカ人1人でペアを組み、計5チームで活動しました。同じチームの人とは、Biosphere2での実習中はもちろん、寮でも同じ部屋で寝食を共にしました。したがって、実習期間中は四六時中英語を話す必要がありました。

食事はBiosphere2施設内で3食ともとりました。サンドウィッチやピザが多く、特大サイズのケーキやクッキーも何度も登場しました。(大の甘党であることもあり実習期間中に5kgは太りました。)

休憩時間は、施設外に出てフリスビーを投げたり、ジョギングをしたり、寮でトランプをしたり、充実した時間を過ごせました。一番印象に残っているのは、とある夜の就寝前の休憩時間に、真っ暗なBiosphere2内を巡ったことです。夜行性のゴキブリが至るところにへばりついていたのが今でも忘れられません。

Q3. なぜその場所(国・大学)、その期間を選んだか

留学は、「Space Camp at Biosphere2(SCB2)」というプログラムをベースにしたものなので、場所や期間は初めから決まっていました。だから、自分でどこに、どのくらい滞在するのかについて自分で選ぶというプロセスはありませんでした。

Q4. 留学に至るまでの準備について

本プログラムには、日本で事前学習に取り組む期間がおよそ2か月設けられていました。本プログラムの最終的なミッションゴールである「火星に移住した際に居住施設となるBiosphere3の設計(デザイン)」を見据え、下記の課題に取り組みました。

 

Q5. 準備、留学中の両方について、「こうしておけばよかった」と思う反省点と、自分なりに工夫してよかった点

反省点としては、害虫対策をあまりしていなかったことです。後にも記述しているのですが、とにかく寮で蛾が大量発生していて、タオルでたたく等物理的な攻撃しかできなかったので、蛾専用の害虫スプレー等を持っていくべきでした。

工夫した点としては、クレジットカードではなくデビットカードを持って行ったことです。デビットカードは、使用できるお金に上限があるので、たとえ亡失したり、盗難にあったりしても被害総額に限りがあります。

Q6. 留学していた場所について

Bisphere2は米アリゾナ州のオラクルにあります。ほとんどが砂漠地帯で所々にサボテン等の耐乾性の植物が生えていました。8月なので灼熱地獄を覚悟で現地に向かったのですが、想像したよりは暑くなく、肌感覚としても日本の日中の方が暑いくらいでした。たまに雨が降る時は、雷雨のときが多く、雷鳴で冷や汗をかいたのを覚えています。中日に、絶景を眺めにドライブしに行ったのですが、その時の景色が本当に広大すぎて、地球のドラマチックさをひしと感じました。

アリゾナ州に到着して初めに驚いたのは、スーパーの圧倒的な広さでした。大量・多種類の商品があたり一面にずらっと並んでいて、モンスターエナジー1つとっても何種類あるねんっていうほど品揃えがすごかったです。日本で見たことのない商品もたくさんありました。ちなみに、歯磨き粉やバケツアイス、土井先生(元宇宙飛行士)が宇宙に持って行ったという魔法の薬(?)を購入しました。

Q7. 留学中どのような人とかかわったか

一緒に京大生メンバー4人はもちろん、現地ではアメリカの学生5人とも親睦を深めました。お互い協力しながらタスクを取り組んだり、文化交流(書道、茶道、けん玉)をしたりしてチームワークを高めることができました。Biosphere2で働かれている研究員の方や教授とも話す機会が多くありました。また、今回の実習では3人もの宇宙飛行士の方ともお話する機会が貴重な時間を過ごすことができました。

Q8. 英語の能力はどう変化したか

やはり英語を話すことへの抵抗が幾分か減ったように思います。アメリカの学生と同じ釜の飯を食う環境では英語を介したコミュニケーションを取らざるを得なく、自然と英語を話すことに慣れました。また、Biosphere2での講義や実習を通じてその分野ならではの専門用語も学ぶことができました。

Q9. 留学のメリット/デメリットについて

-得たもの

Biosphere2のような隔離生態系を構築するのに必要な総合的な知識や英語のスピーキング能力はもちろん、何より同じく宇宙を目指すかけがえのない仲間を作ることができました。また、短期間と言えど海外で生活を送る経験の一部始終が自分の得た大きな財産だと思います。

集合写真

-失ったもの

留学の期間がちょうど部活の大きい大会と重なってしまったため、大会への欠場を余儀なくされました。ただ、留学にはそれ以上の価値があったと言い切れるので、決して大会に出場できなかったことを負の遺産として捉えているわけではないです。

-得られなかったもの

強いて言えば専門性です。短い期間で「有人宇宙学」という学際的な分野を学ぶとなると、どうしても概論的なトピックしか扱われず、学びを納得いくまで深化させることはできませんでした。個人的な欲としては、もう少し専門性の高い学びを実現したかったです。

 

 

Q10. 現地で苦労した話について

一番苦労したのは、Dormitoryに大量発生していた蛾でした。部屋の壁一面を蛾が覆いつくしていた光景は今も目に焼きついています。大の虫嫌いである自分にとって蛾との共同生活は地獄でした。何度部屋から追い出してもどこからからとなく湧いてくる蛾と格闘する日々でしたが、そんな中で唯一の頼れるのは同じ部屋で寝床をともにしていたパートナーでもあるChristopherでした。部屋に蛾が発生する度に彼に備え付けのタオルで退治してもらっていました。今から振り返ると我ながら本当に恥ずかしい思い出です。おかげさまで、帰国後は蛾で悲鳴を上げることはなくなりました。

また、夜のBiosphere2では、ゴキブリはもちろん、タランチュラやトカゲ、鹿に遭遇することが多々ありました。その度に背筋が凍りつく思いをしていましたが、日本では体験できないような新鮮なスリルがありました。

もう1つ苦労したのが、食べ物に含まれているパクチーでした。ベトナム料理店で食べたフォーや空港で購入したサンドウィッチ等至る所にパクチーが潜んでいて、パクチーが苦手な自分にとってはつらかったです。

 

Q11. 留学について意識し始めた時期とそのきっかけ

大学入学当時から留学への漠然として憧れはあったものの、留学に固執していたわけではありませんでした。今回の留学プログラムを知ったのは、5月中旬にとあるイベントで理学部の先輩から紹介いただいたのがきっかけでした。「有人宇宙」「閉鎖環境施設-Biosphere2」 というキーワードで「これは行くしかない」という思いに駆られ、即刻応募しました。幼少期より憧れを抱いていた宇宙へ挑戦できることへの興奮が当時のすべての原動力となっていたので、「留学」そのものはあまり意識していなかったように思います。むしろたまたま挑戦の場がアメリカだったというのが正直なところです。

 

Q12. 留学後の展望について

本プログラムを通して得た経験を糧に、人類の本格的な宇宙進出に総合的に関わっていきたいという思いが強いです。自分の場合、あくまで専門は医学なので、宇宙医学がメインテーマとはなりますが、宇宙での医療×〇〇を通じてより学際的な学びをこれからも実現していきたいと思います。

Q13. 最後に一言(後輩へのメッセージなど)

やっぱり海外に行くと色々と刺激を受けること多いです。アメリカの学生の優秀さや学問に対する姿勢にはすごく刺激を受けましたが、それと同時に、自分の現状に対して焦りも感じました。大学生の間に留学を通して大海を知っておくことは、自分の視野を広げることにもつながり人生を豊かにしてくれると思います。ぜひ日本を飛び出してみてください!

もしこのプログラムについて、あるいは宇宙医学について聞きたいことがあればお気軽に連絡ください!

Mail: miyashita.yusaku.48w@kyoto-u.ac.jp

Q14. その他、言い残したことがあればどうぞ

 

 

 

コメントを残す