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「 科学者と料理人の視点を身につけ、現代の『食医』になる」

  • 著者:高桑 雅弘
  • 投稿日:
  • 国名: /
  • 派遣先機関:フィレンツェ料理学園
  • 留学目的:料理留学

一問一答コーナー

名前 : 高桑雅弘(TAKAKUWA MASAHIRO )

所属大学・学年 :北海道大学5

留学先の国 :イタリア、アメリカ

留学先の大学: イタリアフィレンツェ料理学園、アメリカミシガン大学

留学の期間: 5 年の夏休み、2019年9月2020年8月COVID-19の影響で2020年3月に中断)

留学の目的 (研/臨/その他) :イタリア料理留学、アメリカ研究

留学の費用(概算) :210万円(新型コロナによる中断までの5ヶ月半の期間で)

学費:120万円

家賃 :30万円 (6ヶ月分)

生活費 30万円

-渡航準備にかかった金額(保険、航空券 Apartmentdepositなど) :30万円

プログラム(仲介してくれた機関/人): イタリアフィレンツェ料理学園、アメリカ→医学部の教員

利用した奨学金 :トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム オープンコース

留学中の住まい :シェアフラット

利用したVISA :イタリア→学生ビザ、アメリカ→J1 short-term visaの予定

加入した海外保険 :東京海上日動

【プロフィール】

1995年8月生まれ。石川県金沢市出身。北海道大学医学部医学科5年。「美味しく健康的な食で元気に生きられる社会」を医師として実現することを目指しています。食を主体的に選ぶ人を増やすため、学生に対して酒類を用いた食育を行う「酒類研究会 醸鹿 Kamo-shiKa」を立ち上げ活動中。関心のあるワード: 食医、食と健康、食と医療、地中海式ダイエット、飲食業、イベント運営、IFMSA-Japan、医学生の留学、Patagonia

【サマリー】

料理留学という医学以外の内容で長期留学をしました。留学の形は必ずしも臨床留学や研究留学でなくてもよいこと、医学生でも休学して長期留学へ行けることを知っていただければ幸いです。

Q1. 留学中にカリキュラムで学んだことについて

料理学校ではイタリア全土の料理を学ぶ調理実習や食の生産現場を訪れるフィールドワークを通して料理の手法から食材のことまで料理全般の知識から、飲食店の働き方など飲食について広く学びました。 また週に4回イタリア語の授業がありイタリア語を初級レベルから学びました。料理学校に2ヶ月間通った後は、フィレンツェ市内のレストランでインターン生として週5日朝から夜まで働き、現場で料理の技術とイタリア語を学びました。料理学校で同期になった日本人の料理人との交流から日本における飲食業界の実態を学ぶことができました。

 

(ワイナリーや牧場、市場、チーズ工房など生産現場を訪問)

Q2. カリキュラム以外の、留学先ならではの現地での生活について

イタリア人の食に対する意識に興味があり留学しましたが、生活を通してイタリア人の食べものへの考え方を学ぶことができました。電話や雑談をするイタリア人の話題が必ず食事に収束していくことは興味深く可笑しくもありました。また、イタリア人の会話を大切にする姿勢は大きな異文化体験でした。イタリア語をイタリア人とコミュニケーションが取れる水準まで習得できたことで、新しい言語を通して世界を認識するきっかけを得ました。

Q3. なぜその場所(国・大学)、その期間を選んだか

-場所について

食と医療の観点で、医学的に注目されている地中海式ダイエットを現地で学んでみたいと考えました。地中海式ダイエットの国はイタリア、スペイン、ギリシャ、モロッコなどいくつかありますが、イタリア料理に良い想い出があったことと、食の意識が高い印象がイタリア人にあったため、イタリアを選びました。

 

 

-期間について

国外出身の友人に「日本に来た初めの年の記憶がほとんどなく、慣れるまで時間がかかった」という主旨の話をされ、できるだけ長く海外で生活してこそ学べることがあると考えました。「できれば2年…」と相談しましたが親からは最長1年という許可が出たため、1年という期間に決まりました。

Q4. 留学に至るまでの準備について

「 海外に言って英語を話せるようになって帰ってきたい」という漠然とした考えから留学を考えていましたが、大学4年時にトビタテの奨学金に申し込むことを決め、書類審査があったため真剣に留学計画を練り始めました。この時は公衆衛生学の教授や留学経験がある先輩方に連絡を取り話を聞きながら自分の留学を考えていきました。医学生の長期留学ということで研究留学の線で考えていましたが、教授からいただいた「医者になってからも留学はできるが、せっかくだから医学生の今しかできない留学をしてみるのはどうか」という言葉に、もう一度考え直すことにしました。ここで「自分のお店を持ちたい」という幼児期の憧れを思い出し、食事や料理のことを現場で経験することで将来自分にしかできない医療ができると考え、料理留学をするに至りました。腸内細菌研究は食と健康と医療というテーマの中で特に興味がある分野だったため、大学の先生に相談をし、留学先の先生とつないでいただき現実となりました(新型コロナウイルスの影響で2021年に延期の予定)。

Q5. 準備、留学中の両方について、「こうしておけばよかった」と思う反省点と、自分なりに工夫してよかった点

腸内細菌研究はイタリアに行く前にエジプトで1ヶ月行う予定でした。しかし頼りにしていた仲介機関との連絡が滞り、留学開始直前に無くなってしまいました。イタリア留学を開始してから大学の先生と連絡を取りアメリカ行きの話を決めることになり苦労しご迷惑をおかけしたため、初めから先生に相談しておけばよかったのではないかと反省しています。イタリア料理留学の決め手も教授に相談したことだったため、まずは近くの頼れる人に留学したいという意思を伝えることが最大の工夫だと思います。

 

Q6. 留学していた場所について

イタリアのフィレンツェの中心部に留学しました。観光地であり日本人はもちろんアジアからの旅行客や在住者が多くいます。栄えており生活に苦労はありませんでした。イタリアはシェンゲン協定に加盟しており、国内線の感覚で別の加盟国との移動が可能です。留学中に違うヨーロッパの国を訪れるハードルは低かったです。おかげでイタリア留学中にスペイン、フランス、イギリス、スウェーデン、スイスを訪れることができました。

 

Q7. 留学中どのような人とかかわったか

料理学校で同期だった学生(日本人の料理人や世界各国から料理を学びに来た人たち)、シェアフラットの大家夫婦、インターン先レストランの人たち、フィレンツェ在住の日本人、日本とイタリアのダブルの子たち、日本からの留学生、行きつけのバールの店員

 

Q8. 英語の能力はどう変化したか

フィレンツェは観光地でもあり中心地で英語は通じますが、ほとんど英語を使わずイタリア語で話すことを心がけていました。ラテン語がルーツという点で共通しているためか、イタリア語の会話が上達したことで英会話の水準も上がったという実感があります。

 

 

Q9. 留学のメリット/デメリットについて

-得たもの

意思を伝える力、国内では出会えない人とのつながり、日本を外から眺める時間と視点、長期留学しないと分からないことがあるという実感など

 

-失ったもの

大学の同期や日本にある学ぶ環境など意図して手放したものはいくつかありますが、失ったものはありません。

 

-得られなかったもの

イタリア語圏だったため英語のトレーニング環境はほとんどありませんでした。

 

Q10. 現地で苦労した話について

1ヶ月半経った頃でしたが新しい住まいを2週間以内に見つけなければいけなくなりました。料理学校のイタリア語授業をサボらないといけないくらいに切羽詰まったことをよく覚えています。不慣れな海外で現地語だけで家を探すことの難しさや家がなくなることへの危機感は日本では味わえない経験ではないでしょうか。またレストランインターンシップは無給でしたが出勤日は11時間ほど働いていました。この時に労働と対価について真剣に悩みました。またその悩みを通して外国人が海外で働く際に正当に評価されることの難しさに想いを馳せました。知識労働でも教育機関でもない労働について考えることができたのは、大学を離れレストランでインターンをしたおかげです。

Q11. 留学について意識し始めた時期とそのきっかけ

何度かタイミングがありました。大学入学のために1度浪人しているのですが、この浪人時代に漠然と「1年休学して留学に使いたい」と考え始めました。きっかけは高校時代に初めての海外渡航でアメリカに行ったことにあります。MITやハーバードなど有名大学を見学に行くツアーでしたが、海外への憧れを刺激された記憶があります。大学に入学してからは忙しく勉強する中でその気持ちを忘れていた時もありました。大学3年で参加したIFMSA-Japan(国際医学生連盟 日本)の主催する国際会議で自分の英語力の低さに凹み、「海外留学して英語ができるようになってくる」と強く思い留学を計画し始めました。留学を志し応募を決めたトビタテの奨学金で書類を書く際に改めて自分のやりたいことを掘り下げた結果、母国語が英語ではない国への留学になってしまいましたが。

 

Q12. 留学後の展望について

留学期間内に「医師として食を用いて人が健康でいられる社会をつくっていきたい」 と、改めて医師になることへの覚悟ができました。医師として飲食業へ介入することや医療者への食と健康の教育を、個人レベルではなく事業として行っていきたいと考えています。

 

Q13. 最後に一言(後輩へのメッセージなど)

留学に行く前は「留学はすごいこと」と憧れと嫉みが入り交じった感情で留学のことを見ていました。留学から帰ってきて言えることは「留学は全然すごくない」ということです。ただ、留学に行くことで初めて学べることがあります。チャンスを掴みに行けば世界の見え方は変わります。自分の「やりたい」の気持ちに正直になってみてください。

 

Q14. その他、言い残したことがあればどうぞ

 

mtb_jack08@eis.hokudai.ac.jp 宛てにご連絡いただければ僕の経験を共有したり留学の相談に乗ることができます。よろしければご利用ください。

留学ブログ:https://kamoshite-kuwa.hateblo.jp/

酒類研究会 醸鹿 Kamo-shiKaについてはInstagram(@osakenoshika)やFacebook(@osakenoshika)から。

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