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MGH外科病理部へようこそ

  • 著者:大山壮歩 (千葉大学医学部6年)
  • 投稿日:
  • 国名: /
  • 派遣先機関:ハーバード大学 マサチューセッツ総合病院(MGH)病理部
  • 留学目的:臨床実習

一問一答コーナー

名前:大山壮歩 (Soho Oyama)

所属大学・学年:千葉大学医学部6年

留学先の国:アメリカ
留学先の大学(機関):ハーバード大学 マサチューセッツ総合病院(MGH)病理部

留学の期間:1ヶ月(6年・6月)

留学の目的:臨床実習
留学の費用(概算):60万

学費:30万

-家賃:10万

-生活費:5万

-渡航準備(保険、航空券、Apartmentのdepositなど):15万
プログラム(仲介してくれた機関/人):千葉大学 中谷名誉教授

利用した奨学金:トビタテ留学JAPAN
VISA:ESTA
保険:トビタテで加入したもの
留学中の住まい:ホームステイ

 

【プロフィール】

東京都出身。親の仕事の都合で2〜4歳までアメリカ・ペンシルベニア州で過ごす。帰国後は、そのまま都内のインターナショナルスクールに7th Gradeまで通う。受験を経て都内の某私立中学校に入学し、そこから先は日本語しか使わない環境で普通に過ごす。

医学部3年次に、今でも大変お世話になっている(よく飲みに連れていってもらっている)先生がやっている TGCV(中性脂肪蓄積心筋血管症)に関する研究に首を突っ込む。そこから研究の魅力に取り憑かれ、色々な研究室や先生のお話を聞いて回るようになり、6年次にたまたま縁のあった病理学教室で留学するチャンスをいただいた。

【サマリー】

・ボストンはニューヨークとは違った刺激であふれた古き良き街

・MGHとはいえど、最終的に提供している医療のレベルは日本とあまり大差はなかった

・しかし働いている医師のレベルはものすごく高かった

 

Q1. 留学中にカリキュラムで学んだことについて

毎日主にResidentのシャドウイングを行った。アメリカでは日本と違い、病理部の中で臓器ごとに部門が分かれている。そのため1週間ごとにローテーションをする臓器を選ぶことができ、私は肺・乳腺・血液・消化管を選んだ。

Residentの主な業務は、指導医とともにその日の症例の最終チェックを行うsign outや、臓器の切り出しや標本化、手術室横で迅速検体を待ち凍結標本の作成・診断、などと非常に多岐に渡った。また毎日何かしらのカンファレンスが行われており、例えば小規模のものでは病理部を回っているResidentを対象とした講義に毎日参加した。大規模なものでは、病院の呼吸器科の外科医、腫瘍内科医、放射線科医、病理医が文字通り一堂に会し、治療方針について話し合う Oncology conferenceが毎週行われていた。

Q2. カリキュラム以外の、留学先ならではの現地での生活について

ボストンはハーバード大をはじめとして多くの大学があり、地下鉄網なども発達しており、日本と変わらない水準で生活することができ、実習に集中することができた。また日本人研究者交流会のコミュニティーが存在し、研究者を志す自分にとって刺激となる話が多く聞けた。(MITでブラックホール撮像に成功した先生による講演があり、その壮大なスケールに胸を打たれました笑)

Q3. なぜその場所(国・大学)、その期間を選んだか

-場所について

世界最先端の研究を行っている病院で症例を経験することで、現在の技術でできること/できないことを見極め、研究におけるニーズを探求することができると考えたため。

-期間について

千葉大学では、学外の病院実習として一ヶ月の間好きな病院で実習を行うことができる。その時期もある程度までは希望を出すことができたため、ボストンが寒くなりすぎない6月を選んだ。

Q4. 留学に至るまでの準備について

千葉大学では、学内の病院実習として一ヶ月の間大学病院の好きな科で実習を行うことができる。私はそこで病理診断科を選択したのだが、そこで今回のMGH実習のきっかけをいただくことができた。一方で費用が高額かつ自費である点がネックだったが、その時たまたま全学の方でトビタテ留学JAPANという用途不問・返済不要の留学支援金制度の恩恵を受けることで留学に至った。

Q5. 準備、留学中の両方について、「こうしておけばよかった」と思う反省点と、自分なりに工夫してよかった点

留学を開始してから現地でしばらく経った頃に大学側からメールをもらい、どうやら本来もらえる予定で話が進んでいた授業料がもらえないということがわかった。私はその少なくない授業料をもらったとしても、かなりギリギリの資金でやりくりしていたため、正直これにはかなり困った。
結果的に、日本にいる両親から借金をすることでなんとか事態を切り抜けることができたのだが、留学中は本当に何が起こるかわからないし、異国の地で資金が尽きるということさえも考えて第二、三の策は常に考えておくべきだったと身に沁みて痛感した。

Q6. 留学していた場所について

ボストンはアメリカの中でも最も古い都市のひとつであり、歴史と最先端が調和した風情のある港町である。またMGHはハーバード大学の主たる関連病院であり、これまでノーベル賞受賞者を11人輩出するなど、世界トップの研究機関として知られている。

Q7. 留学中どのような人とかかわったか

MGHの外科病理部は全米の病理部の中でも一二を争うほど忙しいらしく、Residentの先生が忙しすぎてあまり構ってもらえない日々が続いたり、自分がシャドウイングを行うだけでお互いに精一杯だったり、なかなか肉体的にも精神的にもハードな日々が続くこともあった。

しかし、隙間時間でもわざわざ日本から来てくれた物好きな学生のために何か得られることを、と教えてくれようとする指導医の先生や、気にかけてくれる技師さんなども多数おり、大変お世話になった。また Pathology Assistant(PAさん/切り出しの専門職)など、日本では見られない職種の方々も数多く存在し、マンパワーの強さを実感するとともに、病理部がいかに科として確立されているかということを身に沁みて感じた。

Q8. 英語の能力はどう変化したか

元々アメリカに住んでいたこともあり、日常生活では特に困ることはなかった。指導医には「あとは慣用句などのこっちの独特の言い回しや表現を覚えることだね」との評価をいただいた。医学英語に関しては、USMLE の pathologyの範囲を一通り学習してから実習に臨んだ。疾患概念や病期分類などが日本と違う場合があるので、この勉強は有用だったように思う。

Q9. 留学のメリット/デメリットについて

-得たもの

Toughness

-失ったもの

お金

-得られなかったもの

トビタテ授業料(残りの30万)

Q10. 現地で苦労した話について

上述したように、MGH外科病理部は全米の中でも一二を争うほど忙しく、Residentの先生方も日付をまたぐ頃まで病院に残り、翌朝は5時から病院に入りタスクを処理するということが日常的だった。このようなアメリカ式医療のhigh volumeな一面を垣間見ることができたのは、大変だったが、いい経験だった。今後も当直などで辛い夜があったら、今回頑張った経験を思い出そうと思う。

Q11. 留学について意識し始めた時期とそのきっかけ

5→6年に上がるころ。自大学病理診断科実習。

Q12. 留学後の展望について

量子生命科学的なアプローチにより新しい病態概念を発見し、その疾患をなくすことで、世界をより健康な場所にしたいです。

Q13. 最後に一言(後輩へのメッセージなど)

Surgical pathologyは、マンパワーがある・科自体が臓器別に分かれている・切り出しの方法が違う、など日本と異なる知見がたくさん得られる大変刺激的な環境でした。臨床留学×病理という選択はかなりマニアックだとは思いますが、もし興味のある方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。

Q14. その他、言い残したことがあればどうぞ

COVID-19の収束を心より祈っております(2020/3/5現在)

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