
GP実習@Leeds,UK
一問一答コーナー
名前:千葉 馨(Kaoru Chiba)
所属大学・学年:北海道大学6年
留学先の国:イギリス
留学先の大学(機関):リーズ大学
留学の期間:6年/2019年6月
留学の目的:臨床実習
留学の費用(概算):20万円
-学費:なし
-家賃:なし
-生活費:7万円
-渡航準備(保険、航空券、Apartmentのdepositなど):保険約1万円、航空券12万円
プログラム(仲介してくれた機関/人):公益財団法人 医学教育振興財団
利用した奨学金:なし(財団から約10万円の補助あり)
VISA:short-term student visa
保険:海外旅行保険
留学中の住まい:大学寮
プロフィール
世界中の国々を訪れるのが好きで、現在まで旅や海外臨床留学で約50ヵ国を訪問。将来は世界の様々な場所で国際保健に貢献したいと考えている医学生です。
サマリー
GPシステムで名高い英国にて、1か月間GPのトレーニングを受けることができました。特に私のようにプライマリケアに興味のある医学生にとっては、地域に根差し住民に寄り添う医療を思う存分いろんな角度から経験できる機会になると確信しています。
Q1. 留学中にカリキュラムで学んだことについて
実習はリーズ大学ではなく、リーズの街から電車で20分ほど離れた人口2万人弱の小さな町のGPクリニックで行いました。
実習では大半の時間は外来にいて、最初は担当の先生の診察を見学し適宜身体診察をさせてもらったり症例に関してディスカッションをしたりしました。慣れてくると自分専用の外来部屋を持たせてくれ、そこで予診を取りました。詳しくは、まず電子カルテで患者のこれまでの受診歴やプロブレムリスト、内服薬、今回来院した目的をチェックし、自分で患者を呼んで部屋に招き入れ、問診と身体診察を行い、所見をまとめ指導医に報告する、という流れです。最初の内はただ話を聞いて終わったり、患者の要望をその通りに指導医に報告したりすることしかできませんでしたが、慣れていくにつれどの患者にもルーティーンで行うべき質問や身体診察に加えて、現病のために施行すべき追加的な質問や検査を行い、それらの結果をまとめて簡潔にプレゼンするよう心掛けました。私が初めて会う患者について指導医の先生がプレゼンしてくれる時のまとめ方、言い回しをそのまま真似するだけでもプレゼンの質がぐっと向上する感覚がありました。
GPクリニックの外来で得たことをまとめるなら、ショートプレゼンの作り方です。GPに来る患者の多くは慢性疾患を抱えており、急激な変化をもたらす疾患に遭遇することは決して多くはありません。したがって、ショートプレゼンでも全てのプロブレムについていちいち詳しく経過を説明する必要はなく、今回患者が来院した理由と私たちに期待されている治療をスムーズに結びつけるような所見を中心に述べることを学びました。もちろん想定外の健康問題が潜んでいる可能性にも常に注意を向ける姿勢は重要なので、問診や身体診察ではそれらをスクリーニングできるよう心掛けました。
Q2. カリキュラム以外の、留学先ならではの現地での生活について
ちょうど同じ期間にリーズ大学に留学していたフランスやヨルダン、パキスタン、バングラデシュ、そして日本からの医学生たちと、週末に集まって楽しい時間を過ごしました。各国の料理を持ち寄ってのパーティーは特に印象に残っています。
Q3. なぜその場所(国・大学)、その期間を選んだか
-場所について
まず、世界中から医療者が集まっている英国の医療現場に身を置き、その中で医師として働くことはどういうことなのか、そしてそれが本当に将来自分が目指す姿なのか見極めたいと思ったのが、この英国留学に応募した一番大きな理由でした。大学の選択に関しては、書類審査、面接の結果、リーズ大学への派遣が決定しました。
-期間について
4週間のあいだ、基本的にはGPクリニックで実習をしていました。加えて、私が指導医の先生に相談した結果、異なる町のGPや高次機能病院の救急科・麻酔科での実習も経験することができました。
Q4. 留学に至るまでの準備について
私が参加したのは、医学教育振興財団の「英国大学医学部における臨床実習のための短期留学」です。以下に私の応募した2018年度の情報を記載します。
この留学に応募するためにはまず所属する大学に推薦される必要があります(各大学は2人まで推薦が可能)。その後財団が書類審査したのち、書類審査通過者に対して面接が行われました(2018年8月中旬)。面接の合否と留学先は2018年8月下旬には大学経由で通知されました。
それ以降は留学に必要となる書類を作成し、それぞれの期日までに先方に提出する形で進みました。留学先・年度によって変化すると思いますので、詳しい内容は 公益財団法人 医学教育振興財団「英国大学医学部における臨床実習のための短期留学」公益財団法人 医学教育振興財団「英国大学医学部における臨床実習のための短期留学」を参照してください。
Q5. 準備、留学中の両方について、「こうしておけばよかった」と思う反省点と、自分なりに工夫してよかった点
外来でもササっと確認できる内科のマニュアル的なものを持って行ったのは良かったと思います。
反省点としては、実習開始前に英語で問診を一通り実施できるようにしておいたほうが実習への入りがスムーズになるかと思います。
Q6. 留学していた場所について
リーズという英国北部の主要都市の近郊にあるビングリーという町のGPクリニックで実習を行いました。
Q7. 留学中どのような人とかかわったか
GPクリニックの先生方、Nurse Practitioner、看護師、事務員、その他コメディカルの方々、リーザ大学の留学コーディネーター、そして同時期に留学していた医学生。
Q8. 英語の能力はどう変化したか
プレゼン能力の向上は自覚しています。
Q9. 留学のメリット/デメリットについて
-得たもの
・GPとは何か、についての理解、経験
・問診・身体診察、プレゼンのスキル
-失ったもの
大学の臨床実習を休んで参加したため、大学での実習で学ぶはずだったものは失ったものと言えるだろうと思います。
-得られなかったもの
GP以外の英国の医療現場での臨床経験
Q10. 現地で苦労した話について
毎日バスと電車を乗り継いでGPクリニックまで通っていました。実は実習科が決定するまで自分が実習をするGPクリニックがリーズ市内に無いこと、ましてや寮から片道1時間もかかる場所にあろうとは知る由もありませんでした。これから本留学に行かれる学生の皆さんは、希望する実習科がどこにあるのか事前に確認することをお勧めします。私個人としては英国の美しい田舎を毎日通学したのはとても良い思い出です。
Q11. 留学について意識し始めた時期とそのきっかけ
大学3年時に、本留学プログラムで英国に行かれていた同大学の先輩のプレゼンテーションを聞いたのがきっかけでした。
Q12. 留学後の展望について
英国の臨床現場は、GPこそ英国出身者がほとんどですが、他の診療科をのぞいてみるとインドやパキスタンを中心に様々な国出身の医療者であふれており、彼らが協力して現場を回しています。このような点で、日本人もその中に入って活躍するのはそれほど想像に難くないな、という印象でした。世界にはこんな医療現場もあるんだと身をもって知ることができたのは、今後の自分の選択の大きな助けになると予感しています。
Q13. 最後に一言(後輩へのメッセージなど)
英国のGPを思う存分見て、体験するのに本留学は絶好のチャンスです。興味がある方はぜひ応募してみてください。
Q14. その他、言い残したことがあればどうぞ
本留学の体験記は毎年度各大学に冊子として配られているはずなので、大学の図書館などで過去に留学した医学生の体験記を読んでみて下さい。各留学先の特徴やより具体的な実習内容を知ることができるはずです。