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全米一位の小児病院の自閉スペクトラム症外来で実習しました!

  • 著者:古川 佐和子 (東京医科歯科大学医学部6年生)
  • 投稿日:
  • 国名: /
  • 派遣先機関:Boston Children’s Hospital / Brigham and Women’s Hospital
  • 留学目的:臨床留学

一問一答コーナー

名前:古川佐和子(SAWAKO FURUKAWA)
所属大学・学年:東京医科歯科大学6年
留学先の国:アメリカ合衆国
留学先の大学(機関):ハーバードメディカルスクール
留学の期間:6年次 2019年4-5月
留学の目的:臨床実習
留学の費用(概算):自費で出したのは20万円(個人的な旅行を除く)(奨学金を34万円いただきました)
-学費:学校が支払ってくれるため無料(自費だと$4900/mo)
-家賃:2か月で約25万円
-生活費:月5万円? (私的な旅行は除く)
-渡航準備(保険、航空券、Apartmentのdepositなど):保険:8万円、航空券:14万円
プログラム(仲介してくれた機関/人):学校
利用した奨学金:学校の奨学金
VISA:ESTA
保険:OSSMAのセット保険
留学中の住まい:病院の近くの家(Rotatingroomというサイトから)

プロフィール

東京医科歯科大学6年 愛知県出身 岡崎高校卒業 水泳部

将来の夢は、自閉スペクトラム症に関わる研究をすること(メイン)

自閉症スペクトラムなどの障害を抱える人の権利向上などの社会的支援にも関心があります。

 

サマリー

・全米一位の小児病院での自閉スペクトラム症外来で実習しました

・障害のある子どもたちに対するアプローチを全般的に学びました

・後半の先天奇形部門では胎児病理、染色体検査、遺伝子検査なども実際に経験しました

Q1. 留学中にカリキュラムで学んだことについて

自閉スペクトラム症外来を前面に出しておりますが、実は2カ月間のうちにさまざまな場所で実習しました。1カ月目の実習は、障害のある子どもたち全般に対するアプローチを学ぶプログラムだったので小児神経病棟、合併症病棟(脳性麻痺や代謝異常などのベースの疾患がある子が肺炎や喘息になって入院する場所)も経験しました。さまざまなタイプの子どもたちと遊びながら関わり、それぞれの子どもたちの置かれる状況を適切に把握し、適切な医療を提供する大切さを実感しました。この分野特有のことかもしれませんが、マサチューセッツ州の特別支援教育に関しても学びました。医療だけでなく、教育や社会情勢などの患者を取り巻く様々なものに対する知見を深められたことは最高の経験です。

2カ月目は先天奇形の病理を学ぶプログラムに在籍しました。Brigham and Women’s Hospitalという隣の総合病院で実習しました。前半2週間は何らかの理由で亡くなってしまったり中絶されたりした胎児・胎盤の剖検、切り出しなどを行いました。初めて亡くなった赤ちゃんを見た時はとても悲しくなってしまいましたが、頑張って慣れました。スライドガラスに乗るサイズの赤ちゃんを見た時は本当にびっくりしました。日本ではなかなか経験することができない症例なので非常に貴重な体験でした。後半の2週は胎児・胎盤だけでなく、不妊に悩むカップル、私が1カ月目に回った外来・病棟の患者さん(発達に遅れがあったり奇形があったりする子供たち)の染色体検査、遺伝子検査の結果解析業務をしました。日本では保険の関係があってなかなか遺伝子検査までたどり着けないことが多いので、アメリカでこのような経験ができてうれしかったです。1カ月目に経験した症例に似たケースを2カ月目に実際に検査することにもなり、実習に連続性が持てたことも非常に良かったです。

Q2. カリキュラム以外の、留学先ならではの現地での生活について

ボストンは基本的に治安がとても良いです。夜にやたらと出歩かない限り怖い思いをすることはありません。教育環境がとても良いところだったので、人々の態度も丁寧で優しく、人種差別を受けることも特にありませんでした。ボストンで唯一苦労したのは食べ物です。カンファレンスに参加すると朝食や昼食が支給されるのですが、少し口に合わなくて悲しかったです。外食もそこまで口に合わなかったので、長期間住むことになったら自炊をすると思います。

住まいに関して、一カ月目はハーバードメディカルスクールの学生とシェアハウスをしていて、二カ月目はボストン市内のラボのテクニシャンの方の家に滞在していました。皆さんとてもやさしく、一緒に住む人に恵まれたことも幸運でした。

Q3. なぜその場所(国・大学)、その期間を選んだか

-場所について

発達障害を診る臨床実習がしたかったので、主に米国を考えておりました。私の学校から行ける場所でかつ自分の興味のある分野がある大学は、ハーバードメディカルスクールとVSLOという自費で世界中の医学部の臨床実習に参加するプログラムがありました。VSLOは1カ月あたり100万円くらいを自費で払わなければならなかったので、ハーバードメディカルスクールを選択しました。VSLOは自分の希望する科目のみを選択できますが、ハーバードメディカルスクールの実習は必ずしも自分の希望する分野が通るわけではないので、初めは第一希望にしていませんでしたが、結果的に発達分野を回れてよかったです。

 

-期間について

期間は学校で決まっているので特に選択肢はありませんでした。私の通っている東京医科歯科大学では6年次の4-6月に選択実習期間があり、その間に海外での臨床実習を行うことができます。最大3カ月まで海外に行けるのですが、授業料は2か月分までしか補助されないことと、マッチングの時期が差し迫っていることを考慮して4-5月の実習にしました。

Q4. 留学に至るまでの準備について

準備としては、TOEFLのスコア、学部長からの推薦状、成績証明書、抗体証明書などの書類をハーバードメディカルスクールに送る必要があります。書類の準備については大学がかなり慣れており、スムーズに作成し送付することができました。

事前学習として、東京医科歯科大学ではFOCUSという留学支援授業が週1回行われます。そこで英語での問診の仕方、カルテの書き方、プレゼンの仕方をみっちり指導されます。初めは右も左も分からず大変でしたが、最終回では自然にプレゼンができるようになります。ありがたい授業です。

準備の中で一番つらかったのは、何よりもTOEFLです。HMSに出願するには最低100点が要求されます。私は結局どんなに努力しても99点までしか取れませんでしたが、なぜか大目に見てもらいました。もともとは90点台前半を推移していたのですが、英語の得意な友達に助けてもらうことで99点まで伸ばすことができました。独学で苦しんだら助けてもらうのが一番です。

Q5. 準備、留学中の両方について、「こうしておけばよかった」と思う反省点と、自分なりに工夫してよかった点

今回は自分にとって2回目の留学だったので、留学というものに対する意識はあまり新鮮ではありませんでした。前回の留学と同じように準備をしたのであまりこれといった反省点は見当たりません。

良かった点としては、大学から提供される事前教育(英語での問診、カルテの書き方などの授業)を一生懸命やったことが、今回の留学がスムーズになった理由だと思います。あとは、実際に現地に行って毎日しっかり努力したことが何よりも良かったと思います。

Q6. 留学していた場所について

1カ月目:Boston Children’s Hospital

…全米一位の小児病院。さまざまな珍しい症例が全世界から集まってきます。

①Developmental Medicine

ここにAutism Spectrum Centerが含まれます。Developmental Medicineでは自閉スペクトラム症、ADHD、知的障害、ダウン症、行動異常などさまざまなプロブレムを抱えた子供たちが来ます。発達・心理検査、フォローアップ外来、教育機関への依頼などさまざまな業務があります。

②小児神経病棟

ここでは、脳炎、てんかんを中心とした患者さんが入院します。私が実習した時にはミトコンドリア病の双子の患者さんが来ました。

➂Complicated Care Service(CCS)

いわゆる合併症病棟で、先ほども申し上げたように脳性麻痺や代謝異常などのベースの疾患がある子が肺炎や喘息になって入院する場所です。基本的にはCCSのチームが患者さんを管理しますが、基礎疾患の方が重篤になるなど、その他専門的なアセスメントが必要となるプロブレムが発生した場合は、CCSの医師+NPチームがリーダーとなって、各科にコンサルテーションを依頼します。

2カ月目:Brigham and Women’s Hospital

…マサチューセッツ州第2の総合病院。歴史的に産婦人科系が強いです。

病理部

一般的な病理を扱う部門と、遺伝子検査や染色体検査を行う部門の二つに分かれています。一般的な病理、手術検体の切り出しや顕微鏡での診断を行うところの中でも、胎児・胎盤を扱う部門は少し別格の扱いでした。

Q7. 留学中どのような人とかかわったか

実習中では、レジデントやアテンディングの先生方とお話しすることが多かったです。もちろん、患者さんともたくさんお話ししました。1カ月目の小児病院ではHMSの学生も一緒に回っていたので、現地の学生にいろいろとノウハウを教えてもらうことが多かったです。

実習以外の人とのつながりに関しては、イノシルを通じてボストン留学中の他大の医学部の方々と何回かご飯を食べに行く機会がありました。これはイノシルを知っていなかったら知り合えなかった方たちですし、皆さんがとても優秀で刺激になる方たちばかりだったので非常に良かったと思います!

Q8. 英語の能力はどう変化したか

英語の能力に関しては、行っている間は何とかなっていたという感じだと思います。日本に帰ってきたらすぐに戻ってしまいます。現地の病因にいる時は英語以外のツールはありえないので、自然にコミュニケーションをとる過程で英語が出てきます。きっとそんなもんだと思います。私は2カ月の間に5,6箇所の分野を回りましたが、どの分野も初めの1日には非常にしんどく、2日目からついて行けるようになるというのが常でした。英語というよりも、その科特有の言葉や言い回し、雰囲気に左右されると思います。

Q9. 留学のメリット/デメリットについて

-得たもの

得たもの、と言われると非常に難しいです。毎日の生活すべてが得たものと言えるからです。慣れない環境で努力するという行為自体が、人間が成長するのに非常に有意義であると感じております。勉強した内容はもちろんのこと、人との出会い、生活への適応力などです。週末の観光も留学の醍醐味です。

 

-失ったもの

私は水泳部に入っているのですが、水泳部の楽しいイベントがたくさん詰まっている時期に留学をしてしまったので、部活のことを考えると失ったものがあると言えるかもしれません。それ以外は特にはありません。

 

-得られなかったもの

もう少し自閉スペクトラム症関連の専門家にアポイントメントをとって積極的に会いに行けたら良かったです。実習自体が非常に大変で、実習後は疲れて寝てしまうということが多かったので、それ以上のエネルギーがありませんでした。

Q10. 現地で苦労した話について

文化が違う人に対して精神的なアプローチをするということが非常に難しいということです。さまざまな患者さん(おもに発達障害をもつ子とその親)の話を聞くのですが、なんとなくしっくりこないという感触から抜け出せませんでした。語学力という意味では、言葉通り患者さんの言っていることは理解できるのですが、社会的な背景が異なるためイメージが湧きにくいのです。もし私が帰国子女で幼少時にアメリカの学校に通っていたらまだ想像がついたかもしれません。親と子供の関わり方も日本と何となく異なる気がします。そのような状態で臨床を行うということに、少しリミットを感じてしまいました。

Q11. 留学について意識し始めた時期とそのきっかけ

留学について意識し始めた時期と言われると難しいです。両親がアメリカの大学院・大学を卒業しているので、自分の中では人生のどこかで留学するのは自然なことに思えていたからです。たまたま東京医科歯科大学に入り、学校が留学を推していたのでせっかくのチャンスだからもったいないと思い、応募しました。

Q12. 留学後の展望について

留学後はとりあえず初期研修までは日本で普通に行う予定です。初期研修後は日本で博士課程に行き、ポスドクで渡米することを志しておりますが、まだまだ定まってはいない状況です。

Q13. 最後に一言(後輩へのメッセージなど)

とにかく自分の好きなことを突き詰めるといいことが待っていると思います。海外に限らず、国内でもいろいろな経験ができると思います。学生でいられる時間は短いので、自分が満足できる学習環境を手に入れてください!

Q14. その他、言い残したことがあればどうぞ

特にありません。

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