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音楽のあふれる街ニューオーリンズで臨床実習に参加して

  • 著者:落合 伸伍(名古屋大学医学部 6年生)
  • 投稿日:
  • 国名: /
  • 派遣先機関:Tulane University
  • 留学目的:臨床留学

一問一答コーナー

名前:落合 伸伍(SHINGO OCHIAI)
所属大学・学年:名古屋大学医学部医学科6年
留学先の国:アメリカ
留学先の大学(機関):Tulane大学医学部
留学の期間:2018年3月〜6月(6年次)
留学の目的:臨床実習
留学の費用(概算):60万円
-学費:なし
-家賃:$900
-生活費:$600/month
-渡航準備(保険、航空券、Apartmentのdepositなど):保険 74,450円、航空券(American Airline) 129,100円、Accomodation deposit $800
プログラム(仲介してくれた機関/人):名大医学部国際連携室(大学の提携校)
利用した奨学金:JASSO(8万円×3ヶ月)
VISA:B1 VISA
保険:海外旅行保険「tabihoたびほ」
留学中の住まい:病院敷地内の専用Accomodation

プロフィール

静岡県出身。千葉大大学院にて予防医学の研究に従事しながら、シンシナティ、ロンドン、ベルリン、ボストンと様々な地域で勉強する機会を得る。留学先での出会った多くの人たちに感化され医師となる事を決意し、博士号を取得後、名古屋大学医学部医学科に3年次編入。編入後も、英国のレスター大学、ケンブリッジ大学、そして米国のチュレーン大学に留学し、充実した学生生活に感謝・満足しつつ、次なる目標を模索中。趣味はサッカーとベース(エレキベースとコントラバスの両方)。

サマリー

・南部アクセントに苦しみながらの臨床実習

・フレンチクオーター散策とジャズ・ブルース漬けの週末でリフレッシュ

・臨床実習や生活を通して斬新な経験をたくさんでき、交友関係も広がった

Q1. 留学中にカリキュラムで学んだことについて

2018年3月〜6月の期間でアメリカ南部のルイジアナ州、ニューオーリンズにあるチュレーン大学医学部に留学し、ダウンタウンにあるTulane Medical Centreとすぐ近くのUniversity Medical Centre(通称UMC) にて、およそ3ヶ月間の臨床実習に参加しました。UMCはチュレーン大学とルイジアナ州立大学が共同で医師を派遣している大規模な病院で、両方の大学から多くの医学生が実習に参加していました。実習科は、血液腫瘍内科、整形外科、眼科、プライマリケアでした。

 

まだ少し肌寒い頃のニューオーリンズで、最初の実習科は血液腫瘍内科でした。初めてのアメリカ臨床実習ということで興奮し緊張していたからか、私の最初の挨拶はカミカミで辿々しい英語でしたが、笑顔で向かい入れてもらえました。文法や発音が多少間違っても、はっきり笑顔で喋れば問題ないということです(笑)。さて、血液腫瘍内科の実習では、入院患者さんの管理と外来化学療法に通う患者さんの対応にチームの一人として参加することになりました。学生1人当たり1〜2人の患者さんを主に担当するように割り当てられ、回診して患者さんの状態を把握し、フェローまたはアテンディングのドクターとディスカッションをすることが実習のルーティーンでした。その後はたいてい、学生2〜3人でクルズス、または5〜6人集まってのチュートリアルを受けるという流れでした。現地の学生たちはディスカッションにとても積極的で、学生同士なので間違ってることも度々あるのですが、堂々と活発に議論を交わしていると頭が整理され、勉強の効率が良い気がしました。外来実習で苦労したことは、様々な背景を持つ患者さんの情報整理と把握でした。日本のようなわかりやすいサマリーや紹介状がないみたいなので、隣の州から新たな治療方法を求めてやってきた患者さん、治験参加のため訪れる患者さんなどの、多種多様な背景を膨大な量のカルテから把握するのがとても大変でした。

 

肌に当たる風が暖かくなってきたころ、次のローテーション先は整形外科でした。アメリカの外科系の朝は早いと聞いていたし、アメリカの医療ドラマの早朝ラウンドでは患者さんをたたき起こすシーンは何回か見ていたので、「予習はばっちり」といった感じでした。しかし、真っ暗なうちからラウンド(回診)に出て、1時間のカンファレンスの後に、ようやく空が明るくなったと思った時から手術がスタートするという、濃密な朝のスケジュールによって、実習3日目で既に体力が底を突きかけていました。早朝カンファレンス後にドクターたちと食べる「sugeron morning(彼らがそう呼んでいる)」は甘いマフィンと果物ばかりでしたが、この朝の糖分摂取がドクターたちの体力を支えていることが分かりました。整形外科には、スポーツ、外傷、小児、再建グループがあり、1週間ごとにそれぞれのグループで学ばせていただきました。オペ見学中心の実習でしたが、ガンショットの症例が多く、骨折と銃創の対応を整形外科の外傷グループにて勉強させていただき、日本ではほぼお目にかかれない「銃創+骨折」を見ることができ、とても良い経験(お土産話)になりました。

 

<↑ 真っ暗な朝の5時、回診前に眠気を抑えて笑>

 

5月はじめ、チュレーン大学医学部の新4年生がUSMLE Step2の受験を終えて新たな選択実習に参加するころ、私が次に向かった科は眼科でした。実習先としては想定外の科で勉強することになり、眼科特有の医学用語にかなり苦戦を強いられましたが、一緒に回っていたミシガン州立大学の医学生や若いレジデントのサポートもあり、とても実りある実習となりました。外来実習では初診を任され、問診だけでなく眼底鏡や細隙灯顕微鏡を使って所見をとることが求められましたので、それらの練習をする必要がありました。慣れるまで相当苦労しましたが、糖尿病性網膜症、緑内障、白内障などの典型的所見を多く自分の目で見ることができ、画像所見を見抜く自信が着いたような気がします。そして、体にまとわりつく熱気とジリジリと焼け付くような日差しに体力を奪われる季節になると、チュレーン大学での実習も最後のローテーションとなりました。最後はFamily medicineでの外来実習でした。さまざまな疾患と問題を抱える患者さんを総合的に診る科であるため、情報収集(問診)にかなり時間をかけることになりました。診察の後はアテンディングドクターとのディスカッションタイムでしたが、これがまた濃厚な時間で、疾患の定義・概念と生じうる症状とその治療について、細かく指導していただくことができました。

日本と比べ、1日に診る患者さんの数はものすごく少ない分、大学での学生教育に力を注いでくれているようでした。USMLE Step1を受験してはいませんでしたが、渡米するまでに学んできたUSMLEの勉強が一番役に立った実習でした。しっかりと準備できたおかげで、実習の最後にはアテンディングドクターにお褒めの言葉を頂くことができ、とても嬉しく思いました。

 

<↑ Primary Careの実習を終えてDr. Danielsと>

Q2. カリキュラム以外の、留学先ならではの現地での生活について

週末は音楽バー巡りで街中を歩き回っていました。ニューオーリンズはジャズ発祥地で、歴史ある有名なバーもたくさんあるのですが、南部のトラディショナル音楽が混ざったジャズ、ブルースやロックといった音楽が街に溢れており、小さな街に様々なジャンルの音楽バーがひしめき合っていて、飽きることはありませんでした。ジャズが大好きな私にとって、週末にふらっと音楽を聴きに出かけるのがとても楽しみでした。大抵いつも、音楽とお酒に酔いしれているとあっという間に深夜となって、Uberを呼び寄せて帰宅し(治安は良いは言えないので)、自分の部屋のベットに倒れこんですぐ爆睡、という感じでした(笑)。

ニューオーリンズにはユニークな食べ物がたくさんありました。ベニエ(恐ろしく甘い揚げ菓子)やポーボーイ(ボリューム満点のナマズサンド)などの有名な食べ物に挑戦しましたが、ニューオーリンズに来てしばらく回避し続けていた食べ物がありました。それはcraw fish(=ザリガニ)でした。小さい頃、田舎の田んぼの周りで捕まえて学校の教室の棚で飼っていた赤いアレです。チュレーンの友人たちに誘われてcraw fish partyにも参加してみたのですが、売り切れていたことにほんの少しだけ安堵して、野外のいたるところに積み上げられていたザリガニの頭の残骸を見て、少しだけ物怖じしていたのを思い出します。結局その後、招待していただいた夕食会で再びcraw fishに出会うことになったので、今度こそはという意気込みで掴んでみました。強い香辛料で煮込まれた彼らの殻は赤く硬く、苦労してはぎ取ると、食べられる身は人差し指の大きさにも満たないくらいのサイズでした。香辛料の味が強く、想像していたほどエビのような味はしませんでした。ニューオーリンズ周辺でとれる海産物は豊富(もちろんエビも美味しい)なのにザリガニたちの方が人気な理由は、ニューオーリンズの文化だから、という話を聞きました。食べづらく小さな身を、ゆっくり時間をかけて取り出すことで、世間話を楽しむ時間を作るそうです。のんびりとした雰囲気を持つニューオーリンズの人々の生活に根付いている食文化だなと感じました。

Q3. なぜその場所(国・大学)、その期間を選んだか

-場所について

チュレーン大学が名古屋大学の提携校であり、ニューオーリンズの中心地に位置しているからです。ジャズ好きの私にとっては、ジャズの聖地にある医学部で実習できるなんて、これ以上に素晴らしい環境はありませんでした(笑)。入学後からずっとこの留学枠を狙っていましたので、派遣学生として選ばれてこの上なく光栄でした。

 

-期間について

できるだけ長く滞在し多くのことを経験し、将来のキャリアプランを考える上での判断材料にしたいと思ったため、3ヶ月間留学することを希望しました。

Q4. 留学に至るまでの準備について

留学に必要な英語力の基礎は、TOEFLやIELTSの勉強をする過程で養うことができたと思います。これらのテストで留学条件をクリアした後は、さらにListeningとSpeakingのトレーニングに励みました。Skypeを使ったweb英会話や、自宅でのシャドーイングやリテンション、英語で独り言を言うトレーニングなどを留学まで毎日続けました。また、USMLEの教材を用いて医療英語の学習も行いました。

Q5. 準備、留学中の両方について、「こうしておけばよかった」と思う反省点と、自分なりに工夫してよかった点

ListeningとSpeakingのトレーニングは半年間ほど続けていたのですが、それでもListeningでの苦労した場面は多かったです。大学での講義や研究発表を英語で聞く状況とは違い、医療現場で喋られる英語は早くスラングや省略も多かったです。もっと長い時間をかけて英会話を聞くトレーニングを積むべきでした。留学の1年くらい前からはコツコツと、もっと日常会話に慣れるべきだと思いました。

 

留学中の実習科は思い通りに決まりませんでした。留学する前のメールや電話のやり取りでは、現地の学生が優先的に実習科を決めるので、空きのあるところでしか実習できないと言われ、留学直前まで実習科が決まらない状態でした。しかし、 現地到着後に実習科の事務に実際に足を運んで直接交渉し、現地でできた医学生の友人に手助けしてもらい、交渉が実ったこともありました。少し”pushy”なり過ぎたかもしれませんが、大胆に積極的に行動することは大切だなと実感しました。

Q6. 留学していた場所について

ニューオーリンズの暑さは想像以上でした。私は日本の夏の暑さがあまり好きではなく、留学すれば蒸し暑い日本の夏を忘れられると思っていましたが、ニューオーリンズは日本の夏と同等、それ以上の暑さと湿気でした。春先は涼しいのですが、4月の終わりくらいから5月の始め頃には一気に暑くなる感じでした。蚊やゴ◯ブリなどの虫も多く、対策が必要です。また、夏期には突然ストームがやってきてニューオーリンズエリアを直撃しすることがよくあります。街はかなり水浸しになりますが、雨が止むと暑さのせいか乾くのは早いです。

街はアメリカ南部の有名な観光地で、有名なジャズバーがたくさんあります。アメリカ中から多くのミュージシャンが集まってきていて、フレンチクオーターのあちこちで演奏が聞けます。日本人のジャズマンたちも多く見かけました。また、ミシシッピ川の蒸気船クルーズ、スワンプボートツアーなどのアトラクションも楽しむことができますので、留学生活のちょっとした息抜きにはピッタリだと思います。

<↑ Flood warninngがよく届きます>

Q7. 留学中どのような人とかかわったか

チュレーン大学の医学生の中には、日本で生活していたことがある学生や、これから日本に留学する予定がある学生もいて、何度かホームパーティーに誘っていただきました。また、5月は学年の変わり目の時期ですので、医学部3年生の進級パーティーにも参加させていただき、フレンチクオーターのバーで深夜まで盛大に騒ぎました。4〜5月は、チュレーンの医学生はUSMLE受験の準備に追われていて、頻繁に一緒に遊びに出かけることができなかったのが少し残念でした。

また、チュレーン大学で活躍されている日本人医師や研究者の方々とも交流があり、買い物の手伝いをしていただいたり、近辺の観光地に連れて行ってもらったりすることもありました。異国の地で、個々の目標に向かって努力する人々とお互いに助け合って生活するというのは良いものだなと感じました。日本ではなかなか作れない繋がりを作ることができました。

<↑ 送別会、多くの人に支えられて>

Q8. 英語の能力はどう変化したか

期待していたほど大きな変化は無かったと思います。さらなる英語力の向上を目指すとなると、それなりに覚悟を決めて努力すべきだと痛感しました。ただ、間違いの文法でも伝える努力をして精一杯ディスカッションに参加しよう、という心構えは染み付いた気がします。

Q9. 留学のメリット/デメリットについて

-得たもの

アメリカで臨床実習を3ヶ月やりきったという達成感

 

-失ったもの

お金以外は特にないと思います。

 

-得られなかったもの

特になし!

Q10. 現地で苦労した話について

Q5で書いたように、実習科の決定にはたくさん苦労しました(笑)。英語で電話をかけるスキルが少し向上した気がします。

Q11. 留学について意識し始めた時期とそのきっかけ

名古屋大学に入った時から6年時の実習でニューオーリンズに行こうと決めておりました。将来は国際的に活躍できる医師を目指したいと考えていたので、自分のキャリアについてじっくり検討するためにはアメリカでの実習が必要と考えておりました。目標が達成できて、とても光栄です。

Q12. 留学後の展望について

まだ具体的に決めておりませんが、日本での研修後に、またアメリカでトレーニングを積みたいと思います。

Q13. 留学へ行く前の自分へのメッセージ

「苦労した分だけ十分に良い結果になったと思うので、前向きに頑張れ!」

Q14. 後輩へのメッセージ

目標を見つけてチャレンジし続け、必ずやりきってください!必ず自分のLvUPに繋がります!

Q15. その他、言い残したことがあればどうぞ

本当にいろんな人にサポートして頂いて、実りある留学にすることができました。支援して頂いた全ての人に感謝しております。

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